2015年12月21日月曜日

柚子と時鳥とジャッジメント

by 井上雪子


国際宇宙ステーション(ISS)から油井さんが帰還され、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が公開され、冬の星座は鮮やかににぎやか。「柚子を取りにおいで」というお電話をいただいて持ち帰ったその小さな果実、搾れば冬至という語が匂うようです。

柚子の実る庭のお向かいは神社、久しぶりにおみくじを引けばまず目にしたのが「ほととぎす」という文字。おやおや、神様、お見通しなのですね。「ほととぎす 高鳴くこゑも聞く人の 心ごころに変わるものなり」。なるほど、目に見えないものを敬う極意みたいな心持ちです。

ちょうど、「ジャッジメントを手放すということ」というサブタイトルにひかれて、水島広子さんのトラウマからの回復論を読んでいるのですが、普通の人にも理解可能な日常用語で書いてくださってはいても、「ジャッジメントを手放すということ」の本質はとても深く、「君、かわいいね~」と平気で言ってしまう私には、何がよくわからないのかを考えなくては、というようなぼんやり感が残ってしまいます。

それでも、「ジャッジメントを手放すということ」は何か大切なことだという直観があります。そして、「ほととぎす 高鳴くこゑも聞く人の 心ごころに変わるものなり」、ここにはジャッジメント(=ある人の主観に基づいて下される評価)を手放すということに似た安らかな何かがあります。豊かな批評や表現の自由を、「戦いを始めないための問いの立て方」から始める、そんなところまでじっくり、この不可視の時鳥の声を聞こうと思います。




 水島広子 『トラウマの現実に向き合う(ジャッジメントを手放すということ)』(創元社、2015年)

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