2015年9月28日月曜日

対比の世界

by 梅津志保


「生死」をテーマに俳句を分類して鑑賞するという試みをしている。対比を意識してみようと思ったからだ。その時、この句を思い出した。

佛間まで磯蟹あがる暑さかな 小澤實

フェリスの講座で先生が紹介してくれて、その時からとても好きになった句だ。

浜辺の近くのどっしりとした日本家屋。その家の佛間に磯蟹があがってくるという驚き。でも、磯蟹はそれくらいのパワーがあると思わせる。民宿の駐車場に蟹がいて「こんなところに!」と思ったことを思い出す。蟹からすると棲み処である浜辺を縦横無尽に歩いているのだから、そんなに不思議なことではないのだけれど。「暑さかな」の季語が、蟹にますますパワーを与える。

「生死」でいうなら、最初は当然、「佛間」が「死」を連想させた。ところが、何度も読んでいるうちに、この句には、それだけではない、たくさんの対比が表現されているのではないかと思い、とても驚いた。まず、静かな佛間と動く蟹で「動と静」。そして、佛間の黒と磯蟹の赤で「黒と赤」。もしかすると祖先と今の「過去と現在」の意味もあるかもしれない。発見する喜び。

図書館で借りてきた句集が手元に数冊。どんな俳句に出会えるか、どんな発見があるか。スーパームーンの下で読み始める。

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