2015年10月6日火曜日

身体でいたい

by 井上雪子


20代から40代半ばくらいまで、いつでも身体のどこかがひどく痛かった。嘔吐や下痢を伴って耐える頭痛、背中や腰の痛み、腱鞘炎、ひざ痛、心臓まで痛かったりした。30代で五十肩の激痛を知り、花粉症も辛かった。

病院にもよく行ったし、都市伝説も試した。結局、スイミングが良かったのか、痛みの神経が老化したのか、頭痛は間遠になり、気がつけば肩甲骨の間の我慢できる程度の痛みと、外反母趾の痛みが残っているくらいになった。

が、先週、何十年かぶりに思いっきり転んだ。かっこ悪さのなかから立ち上がり、ゆっくりと痛みを確かめ、身体をたしかめた。そして、その夜、思った、「喉元過ぎれば・・・」という日本の諺は、私には正しかったということを。家族が腰痛や足腰のしびれを訴えていても、自分では出来る限りのサポートをしているつもりだった。が、久しぶりの痛みは、自分が他者の痛みにずいぶんと鈍感になっていることを告げた。

時には痛みは痛烈であってよいと思う。明日はゆっくり歩こうと思う。だが人生は短いらしい、時にはちゃんと立ち止まって空の色と同じ色の身体になろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿