2015年9月8日火曜日

ダウジング、コツコツ

by 井上雪子


再公募となってしまった2020年東京オリンピックのエンブレム、世界の目を意識したデザインが画像検索によって洗練されつつオリジナリティを持ちえなかった過程は、現在の表現の独自性(オリジナリティ)を妙な形で抉り出していたように思う。模範解答を探さざるを得なかったその志向性はひとごとではない。ひとの衣食住も、ひとそのものも個性とか独自性をさほど求められない日々に均質化しているのだろう。

日常的な印刷物やWebサイトでは類似や模倣もそこそこ許され、かつてないオリジナリティの這い出る隙はないとあきらめたくもなる。「真似はダメだけれどのびのび大胆に・・・」なんて鼓舞では足りない。もちろん無から有を生み出す宇宙的な天才もこの世にはいるが、多くの表現者たちは「どこかでみたような」、「いつか聞いたような」記憶の澱、意識や無意識の層をコツコツと掘り、まだ見たことも聞いたこともない鉱脈や水脈を探していく。だが、出る杭は打つ、空気を読む、LINEの鎖が伸びて来る。新しさの泉が干上がりかける。

表現のエンジンが一人きりの全力なら、その燃料は何だろう。真に個性的で独創的な表現は、お手本通りでなくても、みんなと異なっていても、それぞれを幸福な力として生きることを受けとめることから育まれるように思う。呑気なことは言っていられない世の中だ。だから、表現くらい思い切って出してみなよと自分に言う。俳句は古く、深く、新しい。安心して堀り続けて行こう。月の下でお団子を食べながら、のんびり、億単位の税金の使い道について喋ろう。

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