2015年8月17日月曜日

これからレモン

by 梅津志保


我が家のレモンの実を数個摘んだ。隣家に勢いよく伸びていたレモンの実は、まだ青く固い。

私は、『智恵子抄』(高村光太郎)の朗読を、ちょうど句会で聞いたばかりだったことを思い出した。久しぶりの『レモン哀歌』。悲しい詩なのかもしれないが、私にとっては、心がしんときれいになる詩だ。

学生の時、教科書で『智恵子抄』を知った。詩ってなんだろう、意識しだしたのは『智恵子抄』からだったと思う。「これが詩なんだ。」とストンと自分に落ちた。私は「がりりと噛んだ」と「トパアズいろの香気が立つ」の箇所が好きだと思った。音、香り、色。レモンに対する誰もが共感する表現力。そして、レモンに重ねる「思い」。

レモンは秋の季語。あの明るい色や、CMなどの影響か、アメリカやイタリアの南の地方が産地であり、夏の物だと思い込んでいた。これからどんどん色づいてゆく。レモンの木は、雪が降った日、黄色い実に、白い雪が積もり、いつも濃い緑色の葉と共に、明るくすっきりと立ち、きらりとした光景を見せてくれる。

私は、青いレモンの実を「がりり」と噛んでみた。まだ熟していないレモンは、歯がたたなかったが、果汁を絞ると「トパアズいろの香気」が私を包み込んだ。

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