2015年6月7日日曜日

炭と向き合う夏

by 梅津志保


バーベキューセットとダッチオーブンを買い、休日、家のベランダで炭を熾し、煮込み料理に挑戦した。慣れていないこともあるが、想像以上に、時間がかかった。5時から始めて、食べ始めは9時近くになっていたと思う。炭が燃え始めるまで、息を吹きかけたり、団扇で風を送ったりと火の番をする。燃え始めてからも、油断が出来ず、この炭に、この大きさの炭を重ねて、風が通るように・・・と調整し、火力が強くなるまで、鍋が温まるまでじっと待つ。いかにガスや電気の生活が便利であることか。

しかし、炭を熾すという作業は、自分の体を動かしてエネルギーを生み出すということからなのか、妙な自信を私に与えてくれた。そして、普段の生活では、電子レンジのタイマーをセットすれば15分で料理は完成、また、電車の乗換情報を使えば、この電車に乗って何分に駅に着いて、乗り換えは何分など、無駄なく効率的よく動いて、時間を手に入れたつもりでいた。でも、そんなところから少し外れた炭を熾すという時間は、とてもゆっくりと、そして、いろいろ思い通りにいかないことを教えてくれる。

「炭」は冬の季語であるが、暖房に利用しなくなった現代では、バーベキューの夏の季語で使うこともありそうだ。だが、やはり、炭のあのぽっとした赤々とした感じは、冬の寒さの対比としてあってほしいなとも思う。


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