2014年6月10日火曜日

繋がる

by 梅津志保


ウォーキングの途中、街のパン屋さんに寄り道し、メロンパンを買い、河原に座って食べた。 メロンパンは、気をつけて食べていても、ポロポロと崩れる。すぐに蟻が近づいてきた。蟻は、自分の体の大きさと変わらぬくらいのメロンパンの欠片を「どっこいしょ。」と持ち上げる。そのままスタスタと走り、河原の階段を数段上る。 蟻の姿は階段に同化して、また、メロンパンの欠片が大きすぎてよく見えない。私の目にはメロンパンの欠片が階段を上っているように見えて可笑しくなり、ついそのまま蟻を目で追った。

近くに巣穴があるのかと思いきや、蟻は道路を渡り始めた。 比較的車の往来は少なそうな道だが、ヒヤヒヤして見守った。蟻にとっては、長い道のりだろう。蟻は、そんな私の心配などもちろん知る由もなく、メロンパンを持ったまま、真っ直ぐに道路を進む。 ここでもメロンパンの欠片が道路を渡っているように見えたが、先ほどの可笑しい気持ちは吹き飛び、真剣に蟻を追う。無事渡りきれるか。 蟻の渡りきった道路の先には、小さな、けれど蟻にとっては、大きな野原が広がっていた。そこが蟻の住み処だ。蟻の姿はもう見えなくなっていた。

今まで、自分と蟻の関係なんて考えたこともなかった。でも、パンは私の体を、そして同じように蟻の命を支えるのだと思った。 「違う世界と思っていたけど、同じ物食べてるんだね。」と思うと楽しい気持ちになった。こぼれたパンを、命の糧を蟻がリレーしたことによって、命の繋がりや、生物との繋がりを感じることができたとても貴重な瞬間だった。

「繋がる」という言葉のたくさんの意味を教えてくれた、あの蟻の真っ直ぐな歩みを今でも時折思い出す。

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