2015年7月14日火曜日

夏座敷にするまで

by 井上雪子


失業して次の仕事が始まるまで、ひと月ふた月、時間が開くことがある。古いものを捨てるチャンス、自己流プチリフォームの好機到来などといつも思う。だが履歴書を書いたり、求人誌をめくったり(『とらばーゆ』、見かけなくなったけど)、庭の草むしりで一日が終わったり、整理整頓も自分探しもいつも未完で時間切れになる。

だが、今回、ようやく地道に部屋の中の「物」に向き合い、これは何でここにあるのだっけ、と問いかける。「物」を通して、心が辿られ、判断を求められ、決定して、アクションを起こすという完結まで、自分自身に沈んでいくような時間がある。今しかない、ありがたい時間なのだと思う。超・葛藤、メッチャ逡巡、時々錯乱しつつ、地道に「物」(たぶん自分の過去の価値観)を、腹を据え、鏡のように見つめる。自分が把握しうる「物」以外は捨てる。

汗だくになって、文房具や書類やDM・・山となっていたり、あちこちに分散してるモノたちをじっくり何度も並び替え、小分けし、考える。そう、自分に向き合うことはやはり、楽しいことではない。だから来週は素敵なデスクを買おうとか、夜は美しいカーテンカタログを眺める。このムチと飴の日々にも、少しずつ時間にも気持ちにも余裕が出てきた。

『自分にとって必要な歌があるように、俳句が誰かから必要とされること』というみつまめミーティングの場での梅津さんの言葉、なんだか、今の自分にはとても大切なことのようにいつまでも心に残った。「I need you」、勇気のいる深く潔い決断だ。そして、「I don’t need you」、そんな別れに十七音を思う。手放すことを温かく笑えるような日が来るだろうか。夏座敷という美しい季語、そこまではがんばれと自分を励まし、水を飲む。







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