2014年7月21日月曜日

1979

by 梅津志保


私が俳句の講座に持参する3点セットは、『俳句手帖』(本阿弥書店)と、『今はじめる人のための俳句歳時記 新版』(角川学芸出版)、そして『国語辞典』(清水書院)である。

この国語辞典は、俳句を始める時、国語辞典が必要だと思い、実家の本棚から断って拝借してきたものだ。

国語辞典の表紙には「1979 新宿区」と金色の刻印がある。職場も住居も縁のない新宿区の国語辞典があるのか分からない。両親に尋ねたこともない。聞いても多分覚えていないと思うし、誰かにもらったのか、仕事の関係先からもらったのか、ちょっと謎な部分もまた気に入っている。
そして、この国語辞典を引いていると、時折、両親が調べたり、余白に調べた言葉が繰り返し書いてあったりする箇所に出会う。何かで必要になって調べたであろう両親のことを考えたりする。1979年からの年月が国語辞典からあふれでてくるようだ。辞典を拝借したというだけではなく、言葉を受け継いだという感覚だ。

俳句の場では、皆さん電子辞書を使っている。私もいつかは欲しいなと思うし、スマートフォンで写真や言葉も調べる。 
でも、今は、この国語辞典で、いつかまた両親の思いに出会えるのではないかと思い、だいぶ私の手に馴染んできた重い茶色の表紙の国語辞典を今日も鞄に入れる。

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