2015年5月11日月曜日

豊穣神に出会う

by 梅津志保


ゴールデンウィーク中は、川沿いの葉桜の中をよく歩いた。

草むらにしゃがんでいる少女二人がいたので、何をしているのかと覗き込むと、突然立ち上がった少女の手には蛇。その足元では猫が恨めしそうに、蛇を見上げている。私は、びっくりして逃げ出した。たぶん構図は、こうだ。猫が蛇を見つけ、少女が猫と蛇を見つけ、私が少女と猫と蛇を見つけ、びっくりして逃げ出す、まるで4コマ漫画のような展開だ。

振り返ると、もう一人の少女が「逃がしてあげなよ。」と言い、二人はスマホで記念撮影をした後、川に蛇を逃がした。

折り返し、同じ道を通った時、さっきの猫が、葉桜の下、何事もなかったかのように寝そべっていた。少女が手で蛇を持っていたこと、久しぶりに蛇を見たこと、蛇の長さ、クネクネとした動き、目の前の情景を忘れず、対象をもっともっと見つめたいと思った。帰ってきて歳時記で調べると、蛇は「豊穣神」なのだそうだ。

蛇から豊かな夏を受け取った。

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