2015年1月19日月曜日

風の名前

by 梅津志保


河原の土手を犬を散歩しながら歩く。その日は風が強弱をつけて吹いている日で、私は全身に風を感じてぐんぐん歩く。

遮るものが無い空というのは、もうここにしか残されていないのかもしれない。凧を揚げている子供が数人いた。子供の後ろから見学させてもらう。父親が凧を見ながら子供に指示をする。子供が凧を操っているのだけど、凧が子供を引っ張っているようでもあり。子供と凧の真剣勝負は見ているだけで元気になる。

風にのって音楽が聞こえてきた。その方向に進むと、ラテン調のダンスを踊っている集団がいた。クルクルと回って、トントンと足でリズムを刻む。ふと、冬の大地に「起きよ、起きよ」と呼びかけているように思えた。太古の昔、私たちの祖先も、こんな風に踊ってきたのではないかと思いを馳せた。

私の周りにはたくさんの風が吹いている。それはただの風ではない。
初東風、北風、木枯、隙間風。風という一言で済ませるのではなく、耳を傾けて、肌で感じて、ひとつひとつの風の名前を大切にしたい。

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